1.研究開始当初の背景

共産主義(communism)、民族(nation)、資本主義(capitalism)、階級(class)、 恐慌(crisis)、所有(property)、 労働組合(trade union) 賃銀労働者(wage laborer等は、西洋起源の社会経済思想の代表的術語であり、今日では日常語でもある。しかし1880年代前半の英和辞典には、こうした翻訳術語は存在しない。一部を除き、これらの翻訳術語が初めて頻出したのは、わが国では、幸徳秋水+堺利彦の『共産党宣言』(19041906年)であり、中国での普及はこの重訳を契機とする。では、これらの翻訳術語が、(1)幸徳らに先立ち、いつ頃造語され、(2) どのように日中両国で普及、定着したのか。この問題は、西洋社会経済思想の日中両国での普及・定着を解明する上で看過しがたいところだが、研究史では、「共産主義」等ごく一部の術語を除き、まだ本格的な研究はなされていない。

2.研究の目的

 本研究の目的は、上記2つの問題を取り上げ、西洋起源の社会経済思想が、日中両国で乖離を伴いながら受容される過程の一端を解明するところにある。こうした研究目的を達成するため、本研究では、特に『共産党宣言』に着眼し、その翻訳・普及史に即して検討を進め、必要に応じて他の文献にも立ち入ることにした。『共産党宣言』に特に着眼したのは、日本国内では既に100点近い相異なる版本が刊行され、中国国内でも数十回に達する改訳が刊行されていて、こうした術語の経年変化を見る上で、格好の研究対象だからである。

3.研究の方法

 上記、第(1)の問題については、①まず『共産党宣言』を中心に、西洋社会経済思想を代表する翻訳術語を一定数選択する。②ついで、これら術語の造語がいつ頃行われ、定着することになったのかを、明治期の代表的な英和辞典や専門語辞典、例えば、柴田昌吉英和字彙(187318821883)、井上哲次郎『哲学字彙』(1881)、同『英華辞典(1884)、棚橋英和双解辞書字典(1888)、棚橋和訳字彙(1902)等を用いて時系列で確認する。結果はリスト化し、Webでの公開に備える。③さらに、国立国会図書館の近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)によって具体的な用例を探索する。ここでも結果をリスト化し、Webでの公開に備える。上記、第(2)の問題については、①1904(1906)年の初訳以来、100点近くに達する日本語訳の『共産党宣言』の中から30点余の翻訳を選び、造語時期解明で選択した翻訳術語について、その経年変化を検討する。『共産党宣言』の理解を左右する箇所では、重要な段落をまとめて取り上げ、その変化を追跡する。経年変化をリスト化し、Webでの公開に備える。②中国語訳については、現地調査を踏まえ特に古い刊本で重要な版について、国家図書館や中国共産党中央委員会付属中央編訳局図書館などの協力を得て、全ページの画像採取を行い、検討の基礎資料にする。③日本語訳、中国語訳では、翻訳底本の変化、すなわち日本語訳にあっては英語からドイツ語への転換、中国語訳の場合は、日本語(+英訳参照)からドイツ語(+ロシア語参照)訳への転換という、翻訳底本の変化に留意する。④中国語訳の経年変化では、研究代表者大村による先行研究を踏まえ、特にNation(国民、国家、民族)の訳語に力点を置いて、その変遷を追跡し、訳語変更の理由を明確にする。⑤こうした『共産党宣言』の翻訳術語を中心とする研究を補完するため、ドイツ国内での『共産党宣言』普及史やその日本での蒐書史の研究、日中両国で『共産党宣言』以外で特に関心が高い初期のマルクス/エンゲルスの著作『ドイツ・イデオロギー』の翻訳・普及史研究を進める。⑥以上の研究、特に『共産党宣言』の定着普及史解明を効果的に進めるために、幸徳+堺による二種の『共産党宣言』翻訳(英語版およびドイツ語版)、および陳の中国語初訳をデジタル化する。このデジタルバージョンは他の研究成果や『共産党宣言』の蒐集画像と共にwebでの公開をはかる。

4.研究成果

(1)造語の字引における定着

本研究では、明治期央(18711902)を代表する英和・和英の字引項目に即して、西洋社会経済思想を特徴付ける造語翻訳術語の定着をリスト化した。そのごく一部を抜粋掲載すると次のようになる。なお、以下の見出し語の訳語は、幸徳+堺訳『共産党宣言』1904(1906)から引いている。

  無政府(anarchyは、井上哲学字彙(1881)にはなく、柴田昌吉英和字彙1882再版では「擾亂。國亂。亂世」と訳出され、棚橋英和双解辞書字典1888では、柴田と同じ「擾乱、国乱、乱世」で「無政府」の訳語はない。

  階級(class)は、井上哲学字彙では「部」、柴田昌吉英和字彙1882再版では「部。類。族。種。等。科。班。品。樣。儔。欸。流。輩。等級」、井上哲次郎英華辞典再版(1884)では部,類,種,等,班,品,樣,疇,肖類,齒類,流,輩,將,欸,齊,科,群」訳語があてられ、用例としてげられたthe four classes of people「四民,市民工商」があてられている棚橋英和双解辞書字典(1888)、同和訳字彙(1902)でもまだclassに「階級」の訳語は拾われていない

  民主主義(democracy)は、井上哲学字彙では「民政」、柴田昌吉英和字彙再版では「民政。共和政治」、井上哲次郎英華辞典再版では「民政,眾人管轄,百姓弄權,推民自主之國政」、と訳出され、棚橋英和双解辞書字典および和訳字彙では、「共和政治、民政、共和党ノ主義[合衆国ハ諸州ノ共和ヨリナルモノナルヲイテ主権諸州=アリテ中央政府=アラズトレス論]」となっていて、まだ「民主主義」の訳語は拾われていない。

  交換の価格(exchange value)は、井上哲学字彙では「交易価格」、柴田昌吉英和字彙再版ではexchangeに「交易。交換valueに「.價格。價。位價。貴重」等が、棚橋英和双解辞書字典および和訳字彙では、valueに「価値、市価、貴重、緊」があてられている。今日では、この英語熟語には「交換価値」の訳語が定着しているが、少なくとも『共産党宣言』刊行当時までは、valueには「価値」よりも優先的に「価格」の訳語があてられていたようである。

  価値(price)は、井上哲学字彙では「物価」、柴田昌吉英和字彙再版では「物價。價。代銀。褒美。賃」、井上哲次郎英華辞典再版では「價,價錢,價銀,價」等が、棚橋英和双解辞書字典および和訳字彙では、「、物價;代金、估價、評價;報酬、賃、褒美」があてられている。今日では、この術語には「価格」の訳語が定着しているが、少なくとも『共産党宣言』刊行当時までは、「価格」よりも優先的に「価値」の訳語があてられていたようである。今日とは逆である。

  社会主義(socialism)は、井上哲学字彙では「社會論」、柴田昌吉英和字彙再版では「社會論。交際之理。衆用之理」、井上哲次郎英華辞典再版では「公用之理,公用」が、棚橋英和双解辞書字典および和訳字彙では、「社會黨、共論主張者、交際ノ理ヲ主張スル人」となっている。

(2)国立国会図書館の近代デジタルライブラリーによる検索結果

国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでは、明治期著作のキーワード検索が可能である。これによって『共産党宣言』で頻出する翻訳術語の初出例を検索し、リスト化した。そのごく一部を抜粋掲載すると次のようになる

  無政府(anarchyは、既掲の字引には翻訳術語として記載されていなかったが、松永道一『地方自治論』(有隣堂、188710月)に用例がある。

  階級(class)も既掲の字引には翻訳術語として記載されていなかったが、藤沢親之[]『日本消息文典. 中』(不由書院、18769月)に用例がある。

  社会主義(socialismも既掲の字引には翻訳術語として記載されていなかったが、ウールセイ []『古今社会党沿革説. 巻之1』(弘令社出版局、1882)、宝節徳 (フォーセット) []『政治談. 上』(自由出版、1883年)に用例がある。

  恐慌(crisisも既掲の字引には翻訳術語として記載されていないのだが、松崎信『地主安心論』(松崎信、18851月)、マクラウド []『銀行史』(専修学校、18867月)に用例がある

  所有(property)は、既掲の字引では、性質、樣子固有固有性所有物、産、等の訳語があてられていて、「所有」はないのだが、Bluntschli, Johann Kasper『國法汎論 巻之一~巻之四』(文部省、18721)、独刺屈爾西 (ドラクルチー) []『仏国政典. 7巻』(司法省、1873)、神田孝平訳『和蘭邑法. 下編』(文部省、1874)に用例がある。

(3)『共産党宣言』翻訳史に見られる翻訳術語変遷の様相

 既述のように、本研究では、1904(1906)年の初訳以来、100点近くに達する日本語訳の『共産党宣言』の中から30点余の翻訳を選び、造語時期解明で選択した翻訳術語について、その経年変化を検討した。また『共産党宣言』の理解を左右する箇所では、重要な段落をまとめて取り上げ、その変化を追跡した。これらの経年変化をリスト化した。その一部を以下に掲げる。

 この点では、最初に日本語翻訳の翻訳底本が変更されたことを指摘しておく必要がある。すなわち、幸徳+堺の最初の翻訳(19041906)では、英語訳を翻訳底本にしたが、1921年の両名(実際には幸徳が大逆事件に連座し処刑されているので、堺の単独訳)の翻訳では、ドイツ語原本に変更され、これを契機に多くの変更が企てられたことである。例えば、

  紳士と平民(bourgeois and prole- tarians→ブルジョアとプロレタリア(Bourgeois und Proletarier

  当代紳士の社会(modern bourgeois society→近代ブルジョア社会(moderne bürgerliche Gesellschaft)

  略奪(exploitation)搾取Ausbeutung

  国民の移住(exoduses of nations→民族移住(Völkerwanderungen

  商品の価値(price of a commodity→商品の価格(Preis  einer Ware

 等々

 以上は、同一の訳者(幸徳+)間で見られる異同だが、(この幸徳+堺の両訳をおそらく参照しながら)内務省警補局が第2次世界大戦前に英訳および独語原文から翻訳した翻訳間でも類似の変化が見られる。紙幅の関係から、この調査結果の紹介はここでは割愛し、以下に幸徳+堺の1921年版以後現れた多数の翻訳に見られる術語の変遷について若干の事例を掲げる。なお、日本語訳の場合この変遷過程で新たに出現した翻訳術語が、それより後期の翻訳書で必ず踏襲されるということはない。

  共産主義の怪物(Gespenst des Kommu- nismus→共産主義の妖怪→共産主義の幽霊→共産主義の亡霊

  賃金労働者(Lohnarbeiter賃傭労働者→雇用労働者→賃銀労働者→賃金労働者→賃労働者

  全国的階級利益(nationale Klassen- interesse→国民的階級利益→国民的階級利益→国民的な階級利益→ナショナルな階級利害→一つの民族の利益

  財産関係(Eigentumsverhältnisse財産諸関係所有諸関係所有関係

  近代労働者の階級(即ちプロレタリヤ階級)(das Proletariat, die Klasse der modernen Arbeiter→プロレタリア即ち近代の労働者階級→無産者階級、即ち近世労働者階級→プロレタリアート、即ち近代の労働者階級→プロレタリア階級、すなわち近代労働者の階級→近代労働者の階級、プロレタリアートが発展する→プロレタリアート、つまり現代の労働者階級

  手の労働(Handarbeit→筋肉労働→手工的労働→筋肉労働→肉体労働→手仕事→手工業→手工労働

  労働器具(Arbeitsinstrumente→労働具→労働の器具→労働用具→労働器具→労働の用具→労働用具

  所得方法(Aneignungsweise→占有方法→領有方法→獲得様式→所得様式→横取りの様式→取得様式

  ブルジヨアジーを顚覆(gewaltsamen Sturz der Bourgeoisie→資本家階級の転覆→ブルジヨアジーを暴力を以て顚覆→ブルジヨアジーを暴力的に顚覆→ブルジヨア階級を強力的に崩壊→ブルジョア階級を強力的に崩壊させ→ブルジョアジーを始末→ブルジョアジーを力づくで打倒して→ブルジョアジーを暴力的に打倒して→ブルジョアジーの暴力的打倒→ブルジョワ階級の暴力的な破壊

等々。

(4)中国語翻訳の訳語変更

 1920年に現れた最初の中国語訳は、日本に留学経験がある陳望道によって行われた。この翻訳底本は幸徳+堺訳、つまり日本語訳であり、翻訳過程で英語訳によって日本語訳が適宜補完修正された。したがって、基本的な翻訳術語は幸徳+堺訳と同一である。しかしその後、中国でも『共産党宣言』はドイツ語原文から直接翻訳されるようになり、日本語訳および英語訳にはなかった(ないしは意識して、翻訳されなかった)gewaltig(暴力的、強力的)がそのまま、訳出されるようなる。またNation(国民、国家、民族)national(国民的、国家的、民族的)の訳語についてみると、幸徳+堺訳には「民族」(あるいは「民族的」)という訳語が、英語版から翻訳された1904(1906)年番では皆無であり、ドイツ語版から翻訳された1921年版で1カ所(原語はVölkerwanderungen=民族移住)現れるだけである。しかし第2次世界大戦後の中国語版では、Nationnationalには訳語として「民族」がほぼ機械的にあてられるという特徴がある。本研究では、この経緯を明らかにし、こうした転換は先行研究がいうように、第2次世界大戦後に生じたのではなく、1938年版で既に生じていること、この変更は学術的要請というよりは、中国共産党の反日(反帝国主義=反植民地)運動に起因することを解明した。

(5)『ドイツ・イデオロギー』の翻訳史

本研究では、上記の研究を補完するために、マルクス/エンゲルスの初期の著作で、『共産党宣言』と共に日中両国の研究者間で関心が高い『ドイツ・イデオロギー』の翻訳についても検討し、郭沫若による1930年代のリャザーノフ版からの初訳が、中国人研究者および訳者本人の証言とは異なり、陳望道による『共産党宣言』同様、櫛田民蔵+森戸辰男による日本語訳を主たる翻訳底本に用い、ドイツ語版を参照しながら翻訳されたことを明らかにし、最新の翻訳では、Nationnationalには『共産党宣言』同様、「民族」がほぼ機械的にあてられているという傾向を確認した。等々。

5.主な発表論文等

(研究代表者、研究分担者及び連携研究者には下線)

〔雑誌論文〕(計14件)

  渋谷正、『ドイツ・イデオロギー』復元の歴史、『研究年報経済学』大村泉教授退職記念号(印刷中)2013(査読なし)

  橋本直樹、社会思想史・運動史研究のための宝庫、『尚絅学院大学紀要』第65(印刷中)2013(査読なし)

  陳力衛、語彙(史的研究)、『日本語の研究』第8巻第3号、32-42ページ、2012(査読あり)

  陳力衛、中国における「主義」概念の流行およびその普及(中国語)、『学術月刊』第44巻第9号、144-154ページ、2012(査読あり)(中国)

  玉岡敦(研究協力者)、日本語版『共産党宣言』における翻訳術語の変遷、『マルクス・エンゲルス・マルクス主義研究』第53号、11-24ページ、2012(査読なし)

  陳長安(研究協力者)、「国民」から「民族」へ、『マルクス・エンゲルス・マルクス主義研究』第53号、25-40ページ、2012(査読なし)

  渋谷正、日本における『ドイツ・イデオロギー』の翻訳普及史、『マルクス・エンゲルス・マルクス主義研究』第53号、47-64ページ、2012(査読なし)

  大村泉、アジアにおける新MEGA編集の可能性と課題(中国語)、『理論視野』、33—36ページ、2011(査読あり)(中国)

  王東・解澤春訳(解は研究支援者)、『共産党宣言』の32の中訳本、『マルクス・エンゲルス・マルクス主義研究』第52号、101-110ページ、2010(査読なし)

〔学会発表〕(計21件)

  窪俊一、『ドイツ・イデオロギー』第1章「フォイエルバッハ」Online版のコンセプトについて、『ドイツ・イデオロギー』Online試作版専門家国際検討会議、201331日、東北大学

  大村泉+盛福剛、日中両国における『ドイツ・イデオロギー』普及史の起点、復旦大学日本研究中心第22回国際学術検討会、20121218日~1220日、復旦大学(中国)

  大村泉Sammlung der Marx-Engels- Dokumente in Japan und ihre digitale Edition,中国共産党中央委員会付属中央編訳局「中国マルクス/エンゲルス文献センター開所記念学術講演会」、20111115(中国)

  大村泉、昭和初期における『マルクス/エンゲルス全集』企画とコミンテルンの動向、経済学史学会第75回全国大会、2011116日、京都大学

  渋谷正、『ドイツ・イデオロギー』の櫛田・森戸版と廣松渉版、経済学史学会第75回全国大会、2011116日、京都大学

  久保誠二郎、『日本マルクス主義文献』と大正・昭和初期のマルクス・ブーム、経済学史学会第75回全国大会、2011116日、京都大学

  玉岡敦(研究協力者)、『共産党宣言』翻訳史、経済学史学会第75回全国大会、2011116日、京都大学

  大村泉、アジアにおける新MEGA編集の可能性と課題(中国語)、中国共産党中央委員会付属中央党学校国際学術講演会、2011628日、中国共産党中央委員会付属中央党学校(中国)

  大村泉+陳力衛、東アジアにおける『共産党宣言』翻訳普及史、国際学術検討集会「東アジアにおけるマルクス研究の到達点と課題」、2011219日、中央大学経済学部

〔その他〕

ホームページ等

http://www.media.is.tohoku.ac.jp/~skubo/kp.html

6.研究組織

(1)研究代表者

大村 泉(OMURA IZUMI
東北大学大学院経済学研究科教授

(2)研究分担者

窪 俊一(KUBO SHUNICHI
東北大学大学院情報科学研究科准教授

張 立波(CHO RITSUHA
東北大学・高等教育開発センター・講師

久保 誠二郎KUBO SEIJIRO
東北大学大学院経済学研究科博士研究

渋谷 正(SHIBUYA TADASHI)
鹿児島大学・法文学部・教授

橋本 直樹(HASHIMOTO NAOKI
鹿児島大学法文学部教授

 力衛(TIN RIKIEI)
成城大学経済学部教授

(3)連携研究者

   (  )

交付決定額
                               (金額単位:円)

直接経費

間接経費

合 計

2010年度

2,200,000

660,000

2,860,000

2011年度

2,600,000

780,000

3,380,000

2012年度

3,000,000

900,000

3,900,000

総 計

7,800,000

2,340,000

10,140,000

研究分野:社会科学
科研費の分科・細目:経済学・経済学説・思想
キーワード:西洋起源の社会経済思想、共産主義、民族、国民、国家、『共産党宣言』、『ドイツ・イデオロギー』


研究成果の概要(英文):

In this project we have selected about 100 words ( Japanese translations of the representative terminologies of the european socialand economic thoughts, such as communism (共産主義),nation(民族), capitalism (資本主義), class (階級), crisis (恐慌), property (所有), trade union (労働組合),wage laborer(賃銀労働者), etc) from the first Japanese edition of "The Communist Manifesto" by Shusui Kotoku & Toshihiko Sakai (1904) and investigated, in which period were this words created and developed and disseminated.They were created in Japan and then received in China. In this process the Japanese translations of the texts, such as "The Communist Manifesto", "The German Ideology" by Karl Marx and Friedrich Engels, etc, played a major role.
The research results of the project will be opened to the public: http://www.media.is.tohoku.ac.jp/~skubo/kp.html

研究成果の概要(和文):
共産主義、民族、資本主義、階級、 恐慌、所有、労働組合、
賃銀労働者など、西洋起源の社会経済思想を代表する翻訳術語を、幸徳秋水+堺利彦『共産党宣言』初版(1904)から約100点選び、これらが日本でいつ頃造語され、定着したのかを調査して、成果を一覧表に取り纏めwebで公表した。またこれらの翻訳術語が日本語版『共産党宣言』等の重訳を通じて中国でも受容されたことに鑑み、中国での普及の独自性を検討して、学会、論文で公表した。




機関番号:11301
研究種目:基盤研究(B
研究期間:20102012 
課題番号:22330063
研究課題名(和文)西洋社会経済思想翻訳術語の生成と日中『共産党宣言』翻訳史に見るその展開の比較研究
研究課題名(英文)Formations of translation termnologies of European social and economic thoughts
and a omparative study ofthose developments in the translation history of The Communist Manifesto" in Japan and China
研究代表者 大村 泉(OMURA IZUMI)
      東北大学・大学院経済学研究科・教授

研究者番号:50137395


科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告