デジタルネットワークに特徴付けられる情報社会の進展に終わりはありません。情報ツールは次々に革新的に進歩し,それが人びとの行動や慣習に大きく作用し,社会のあり方自体が流動的に変化します。この社会の只中を生きる青少年は,インターネットやケータイに代表される情報通信機器を自在にあやつり,苦もなく必要な情報を次々に手にいれています。ところが,他方でこの簡易性や利便性が有害サイトやネットによるいじめなど,情報モラル・倫理に関する重大な社会問題を引き起こしています。こうした危機的な状況に直面している現在,これに有効な対策を打ち出すことができないでいます。この問題解決の手立てのひとつとして,「情報教育」の充実を挙げることができます。情報社会における「情報教育」の重要性は改めて言を労するまでもありません。それを担当するには常に最新の技術知と最先端の学問的知識が求められていますが,その教育を預かる現在の小中高の教育現場には,それを学び研究する時間や最新ツールを調達する予算が不足し,適切な教育指導プランを作成できません。これから情報教育を担当することを目指す教員には,当然この時代を見据えた「情報教育」が施されなければなりません。これからの時代は,常に時代の先頭に立ち時代が求める「情報教育」に取り組むことできる人材がぜひとも必要となります。

 平成20年度,文部科学省大学院教育改革プログラム(GPプログラム)「情報リテラシー教育専門職養成プログラム」が採択され,本プログラムではこのような課題を解決しうる人材育成を目的とします。そのために本プログラムでは,単に高度な理論研究に取り組むだけでなく,実際に教育現場で応用できる情報教育デザイン,具体的には必須の授業カリキュラムの創造・開発を目指そうとするものです。本プログラムで学ぶ学生は,この取り組みを通して時代をリードする情報教育プランを不断に構築するとともに,教育現場との橋渡し役を務めることから自らの実践的能力の涵養を図ることができ,同時に情報教育を担当する教員らの資質・能力の向上や授業改善に資することができると考えています。本プログラムによってこのような有為の職能的高度専門職を養成することができれば,健全な情報社会の進展に少なからず貢献し,また今日の大学に期待される社会的使命・役割に応えることができると考えています。